パチ友の70代おぢ

そのおぢは毎日昼ごろになるとお店にやってくる。

私と同じく「Pスーパー海物語IN沖縄5夜桜超旋風」が好きらしい。

 

2023年12月頃からだろうか。

茶色の背広を着た常連さんがいるなぁとは思っていた。

毎日パチンコ屋へ通っていれば、常連さんの顔やその人の打つ台は覚える。

隣同士で打つことも多かったが、出会いであるマイホ1(よく通う店)が年明けから当たりが厳しくなってきて、新しい店を探すことにした。

そこで現在はマイホ1から徒歩5分に位置するマイホ2へ通うようになった。

ここは過度な大当たりは出ないものの、適度に課金すれば相応に返ってくるので極端なマイナスにならないのが気に入った。

尚、トイレは異様に臭い。

 

そこで一ヶ月ほど経過した。

その日は朝一番で期待出来る台を打っていたが、なかなか当たらず不貞腐れていた。

すると、あの背広おぢもやってきた。

 

「ほんほん。マイホ1が調子悪いから近所のここに来たのだな。考えることは一緒か…」

 

その時は話しかけずに、おぢが当たればいいなと思っていた。(あんまり当たってなかったけど)

それが何度か続いて、やっとこさ話しかけてみた。

 

「おいちゃん、最近よく会うね」

「せやなぁ」

 

なんと。向こうも覚えてくれていたらしい。

ちょっぴり会話したかったので、話を続けた。

 

「最近マイホ1の海、全然当たらへんよなぁ」

「ホンマやで。今日も見てきたけどゼロや!この時間で当たりゼロやで」

「マジでか」

「マジや」

 

互いに健闘を祈り、台に座った。

 

目を見て話してくれなかったおぢは人見知りなんだと思う。

その後も顔を合わせればこちらはラフに手を振るのだけど、お辞儀されてしまう。

失礼なので、こちらもお辞儀していた。

 

最近になってようやく手を振ってくれるようになった。

 

「ねぇちゃん、よぉそんな金あんな」

「ないよ。今月ボロ負けや」

「アホ言うな。おじちゃん今月20万負けや」

 

だいたい同じくらい負けてるの笑えた。

おぢは軍資金がなくなると1円パチンコで増やしてから、4円に戻ってくるらしい。

真のパチンカス感がある。

 

言葉もハッキリ話すし、身なりも綺麗なので、

50代くらいかと思っていたら70代だと教えてくれた。全然見えなくて驚いた。

向こうは向こうで私を未成年だと思っていたらしく、26歳だと告げると「働け!」と言われた。

ごもっともである。

 

私はこの関係が嫌いじゃない。

名前も住所も職業もこれまでの人生も何も知らないけど、ちょっと笑って世間話する。

トモダチ、の新しい形。パチ友。

 

これからも共に奮闘しような。